雲の種類とでき方や湿度に関する授業では、いくつか確認しておいたり、例えたりするなど、細かなことですが配慮しておきたい事項があります。
この点について確認していきましょう。
1、「雲」と「霧」の違いを確認する
この単元では、霧を例にとって導入を行うことが多く、これはとてもいい方法だと思います。
しかし、ここにはちょっとした落とし穴があり、実は「雲」と「霧」についての区別が、あいまいになっていることも多いのです。まずは、「雲」と「霧」の相違について、しっかり押さえておく必要があると思います。
「雲」と「霧」は基本的に同じものです。しかし、どこが違うのかというと、次のようになります。
「雲」・・視点は雲の外にあって、外側から空中に浮く水滴の塊を見ている。「霧」・・視点は雲の中にあって、内側から空中に浮く水滴の塊を見ている。
したがって飽和水蒸気量の観点からみれば、両者は基本的に同じです。
つまり、しっかりとこの関係性を伝えておかないと、「雲」の導入に「霧」を用いるのは、むしろややこしいことを引き起こすことになってしまいます。
2、雲の分類を整理する
雲の分類については、わかりやすい用語の理解の仕方があります。これについて確認していきましょう。
① 雲の高さ
・上層の雲・・「圏」の文字が入っている。
・中層の雲・・「高」の文字が入っている。
・下層の雲・・特定の文字はなし。
② 雲の厚さ
・厚い・・「積」の文字が入っている。
・薄い・・「層」の文字が入っている。
③ 雨を伴う雲
・「乱」の文字が入っている。
これらのことを伝えるだけで、かなり理解への敷居が低くなると思います。
3、雲の図の描き方
雲を模式図として板書する場合、できれば配慮したいことがあります。それは雲の底部を水平(直線)に描くことです。これは、やがて上昇気流と露点の概念との整合を図るためです。
例えば、寒冷前線の積乱雲の底部は、飽和水蒸気量に達した高さを想定し、水平に描きます。同様に、温暖前線の乱層雲は、前線面に沿って直線状に描きます。温暖前線の前線面の角度は、かなり緩やかで水平に近いのでそれでよいかと思います。
実際には、そうならない場合もあるでしょうけど、模式図ですからそれでよいかと思いますし、メリットの方が多いと思います。
4、「水蒸気」と「湯気」の違い
「水蒸気」は、液体の水が気体になったものですので、目に見えず無色透明な状態です。
一方、「湯気」は細かい水滴で、白く目に見えている状態になっています。
このことを、加熱したやかんの口から出る模式図とともに説明し、やかんの口から水蒸気が出て、口から少し離れたところで、周りの空気に冷やされて「湯気」という目に見える状態になっていることを理解させておいた方がよいと思います。
「雲」や「霧」は、この「湯気」のような状態になっているから、白く(時には黒く)見えることの理解につながります。
5、「飽和」の意味
飽和水蒸気量の「飽和」の意味を、皆さんはどのように教えているでしょうか。
食事時に例え、「もう食べられない」「おなか一杯」と同様の状態をイメージさせるのが、最も理解がしやすいのではないかと、私は考えています。
このように例えると、湿度80%は、腹8分目ということになりますね。
とかく、飽和水蒸気量や湿度の概念は、苦手意識をもつ生徒が多いのが特徴です。このように少し工夫をすることで、敷居はかなり低くなると思います。
ちなみに飽和水蒸気量や湿度の概念には、「別腹」はありませんので、あしからず。