家庭での太陽光発電の現状は

普及が進むの現状とその理由とは???
2023.11

 

日常生活や社会活動を維持していくためには欠かせないエネルギーですが、日本はエネルギー自給率が、ほかのOECD諸国とくらべても低い国です。日本の特に、東日本大震災前の2010年度には20.2%でしたが、原発の停止などによって化石燃料に大きく頼らざるを得ない状態が続き、2019年度で12.1%と大幅に下がりました。
一方、気候変動問題への対応は喫緊の課題であり、カーボンニュートラルの実現に向けて努力したいところです。
このような状況下で、ここのところ普及の加速がみられるのが、「家庭での太陽光発電」です。
そこで、最新の現状を正しくとらえて、授業に生かせないか考えてみましょう。

1、太陽光発電は、高い電気を買わずに済むもの

「現在は電力会社から買ってくる時の電気代が1kWhあたり30~40円くらいまで上昇しているので、発電した電気をなるべく自分で自家消費して買ってくる分を減らせば、十分にお得なんですね。かつての『太陽光は売って稼ぐもの』という古い認識に留まっている人が多いのですが、『太陽光は自家消費して高い電気を買わずに済ませるもの』という新しい事実に、認識をアップデートすることが大切です。
「現在では、太陽光発電の採算性は、初期費用である設備&設置コストがどれだけ安くできるか、昼間に発電した電気をどれだけ自家消費できるか、という2点がポイントになります。初期費用を下げて自家消費を増やせば、10年程度でペイすると、はっきり言い切っちゃっていいかなと思っています。」
これらは、建物の断熱や省エネが専門の東京大学大学院工学系研究科建築学専攻の前真之准教授の取材での話です。

このように、日中に太陽光発電で、家庭の電気料金を削減することが期待されます。
例えば東京都では、一般家屋用の4kWの太陽光パネルを設置した場合、初期費用115万円が13年(現行の補助金を活用した場合8年)程度で回収可能と試算されています。また30年間の支出と収入を比較すると、最大140万円のメリットを得られるとのことです。
新築の住宅はもとより、既築の住宅に設置された場合でも、電気使用料金について、検討の価値がある時代になってきたようです。
もちろんこのことは、気候変動問題対策にも大変に良い話です。

2、家庭用蓄電池の普及の背景

最近では、ソーラーパネルに加え、蓄電池をセットで導入する家庭が増えてきています。その要因を分析してみましょう。

第一に、導入コストの低下があげられます。
家庭用蓄電池の価格は、2017年度には約26万円/kWhですが、2019年度には約19万円/kWhとなり、右肩下がりとなっています。経済産業省の掲げている定置型蓄電池(家庭用)の2030年度の目標価格としては約7万円/kWhです。
このようなこともあり、家庭用蓄電池の市場規模は、2023年度には2018年度比で約1.5倍にも上るという予測もあるようです。

第二に、非常時の電源確保です。
日本は非常に多くの自然災害が発生します。地震や台風、集中豪雨などで停電のニュースを耳にしたり、実際に経験している方もいるかと思います。
蓄電池があれば、万が一停電になった際には、スマホの充電をしたり冷蔵庫などを動かしたり、最低限の電気を使うことができます。

第三に、電力需要ピークへの対応です。
気温が高い夏季の日中や、気温の低い冬季の夜間には、ほとんどの家庭でクーラーや暖房器具を稼働させます。この時、電力の消費量が膨大になると、電力会社からの供給が追いつかない事態に陥る可能性があります。このようなリスクを避けるため、電力を消費する時間をずらす方法が「ピークシフト」という考え方です。
これについて、通常は一般家庭で対応するのは困難ですが、蓄電池を活用すると実践できます。消費が集中する時間を自家消費にし、蓄電池からの供給することが可能なためです。

3、太陽光パネルの効率と寿命

さらに太陽光発電メーカーは、日々太陽光パネルや周辺機器の改良、新製品の研究開発を行っていて、年々性能の高い製品を発売しています。
 一昔前まで、発電効率10%前半だった太陽光パネルは、今や20%台に突入しています。 また、大学や企業で研究されているパネルでは、発電効率30%台の高出力を記録しているケースもあります。
 このように太陽光発電のパフォーマンスは向上しているので、今後も、経済的に元が取れる設備として普及していくことが予想されます。
一方、太陽光パネルの寿命は、一般的に25年~30年程度とされています。
そのため、住宅用太陽光発電を設置した場合は、25年~30年を目安に太陽光パネルの交換や撤去などを検討する必要はあるようです。


わが国では、エネルギーの大部分を化石燃料に依存し、またそのほとんどを輸入に頼っている日本においては、もっと太陽光パネルが普及する必要があるといってよいでしょう。
みんなが無理しなくても太陽光パネルを載せることができるよう、スマートグリッドの普及を含め、再生可能エネルギーの恩恵を届ける政策を、引き続き国には進めてもらいたいと思っています。

参考文献
2021—日本が抱えているエネルギー問題(前編)|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁 (meti.go.jp)
『太陽光パネル』は本当にお得?実は環境に悪い?  気になるギモンを専門家にぶつけました – 地球のミライ – NHK みんなでプラス
住宅用太陽光発電システムのメリット – JPEA 太陽光発電協会
ソーラーパネルと蓄電池が家庭用電源のトレンドに!その理由を徹底解説!|太陽光発電・風力発電・スマートハウスの選び方をリベラルソリューションがご提案。 (liberal-solution.co.jp)
太陽光発電の設置で元が取れるの?特徴やメーカーについてもわかりやすく解説! – エコでんち (ecodenchi.com)いつがいい?蓄電池導入のタイミングを解説 – ソーラーメイトブログ (solar-mate.jp)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

コメントを残す