皆さんが、物体にかかる水圧や大気圧を教えるとき、風船など凹みが見られる物体を見せて、全方向から圧力が加わっていることを、視覚的に確認させますね。そしてこの現象は、物体上部の水や大気の重さと教えていることと思います。
この教え方は定番ですが、ちょっとした生徒の疑問も発生しそうです。
これ今回はこのことについて、考えてみましょう。
1、なぜ全方向に同じ圧力
水中や大気中では、小さな物体であれば、どの方向からも垂直に同じ大きさの圧力を受けることを教えています。
しかしながら、よく考えてみると、これは中学生にとっては、やや不思議に思える性質で、少し納得がいきにくいのではないでしょうか。
なぜかといえば、例えば、自分より上にあるものの重量を支えているのであれば、圧力は下方向にのみ、はたらいていてもよさそうに思えるからです。
ところが、前述のように証拠を見せられているので、自分の考えが、いわば否定されていて、「なぜ???」となっている状態であると考えられます。
どうしてこのようになるかというのは、実はかなり難しい問題です。
先に解答を一言でいってしまえば、「大気や水は流体である」からなのです。
このことは、中学生にはとても難しい話ですので、これ以上授業で深入りはできません。しかし、先生方は、生徒の素朴な質問に備え、多少理解を深めておく価値がありそうです。
実は、大気や水といった流体(気体、液体)は、固体と違って自由に変形しますので、上下につぶされるような力を受けると、水平方向へと向きを変えながら、まるでせり出してくるかのような振る舞いをしようとします。
その結果、左右からも押そうとする力が発生するのです。
このようにして流体は、上下方向にも水平方向にも、同じ圧力で押し合い、そればかりか、斜め方向にも、どんな角度であろうとも、同じ圧力で押し合うこととなるのです。
2、分子運動の視点で見つめる
このことについて、もう少し詳しく「分子の運動」という視点で説明してみると次のようになります。
物体に加わる大気圧を考えたとき、上から下にぶつかってくる気体分子もあれば、下から上にぶつかってくる気体分子もあります。ですから、上からでも、下からでも大気圧がかかるのです。このことは、水圧についても同様です。
このようにして、横方向を含め、あらゆる方向から同じ大きさの大気圧がかかるのです。
このことについて分子をボールに例えば、「ドッチボールがいろいろな方向から自分に飛んでぶつかってくる」イメージでしょうか。
もちろん、中学校の授業でここまで詳しく教える必要はありませんが、「水は液体なので、水の粒がいろんな方向にぶつかって押しているのだね。」程度に、簡単に補足してあげても、将来の理解への含みを持たせることになって、よいかもしれませんね。
参考文献
静止流体の圧力 – EMANの流体力学 (eman-physics.net)
流体内(大気中・水中)の圧力を考えるときのポイント(圧力はあらゆる方向からかかる、圧力のつり合いは壁で考える、力のつり合いと圧力のつり合いの違い) | 大学受験の王道 (daigaku-juken.net)