人は、「なかなか覚えられない」とか、「覚えてもすぐに忘れてしまうので、何度も復習し、やがてそれが面倒になってしまう」といったことは、誰でも経験していることでしょう。
一方、とても楽しい経験は、覚えようとしなくても覚えてしまうし、忘れようと思っても忘れられない苦い経験もあります。
両者はいったい何が違うのでしょうか。そして、それを授業に生かせないか記憶のメカニズムから考えてみましょう。
1、長期記憶とは
学習したことは、短期記憶もしくは長期記憶に保存されます。
私たちからすれば、教えたことは、なるべく長期記憶にさせたいものです。
では、長期記憶にはどのようなものがあるか、見てみたいと思います。
長期記憶は「宣言的記憶」と「手続き的記憶」に分かれています。
「宣言的記憶」とは、言葉で記述できる記憶です。
「手続き的記憶」とは、言葉で記述できない記憶です。わかりやすく言えば身体の動かし方などです。
ここでは、言葉で記述できる「宣言的記憶」についてのみ、より詳しく見ていきましょう。
2、エピソード記憶
「宣言的記憶」は、さらに「エピソード記憶」と「意味記憶」に分かれます。
「エピソード記憶」は、「いつ」「どこで」「誰と」「何をしたか」などを含む物語的な記憶です。
例えば、「部活動の大会で準優勝し、賞状をもらってうれしかった。」とか、「親戚の家でボンゴレを作ってもらい、始めて食べたがとてもおいしかった。」などといったような記憶を指します。
これらは経験や思い出の記憶で、このような記憶は、覚えようとしなくても覚えているし、復習しなくても忘れません。ですので、授業を教えるうえで、学習内容を「エピソード記憶」にできれば、最強の方法になると言えそうです。
3、「意味記憶」
これに対し、「意味記憶」は、一般的に学習を通じて得られる知識です。たとえば、用語を意味とともに覚えたり、公式を導きながら覚えたりすることなどがあたります。
「意味記憶」も長期記憶の仲間ですので効果的ですが、感情とも結びついている「エピソード記憶」と比べると、かなり淡泊な感じがします。
このようなことから、授業を行う上で、その知識に対し、何らかの感情を揺さぶるような「エピソード」にできないか、考えていくことが授業設計の上で大切になるといえるでしょう。