知識を容易に定着させるには・・パート2

知識を定着しやすくする脳科学を利用した究極のテクニックとは???(後半)2023.2

知識を定着させるには、人の脳のメカニズムに合った方法でなければ、大きな成果は期待できません。
今回は、前回に続き、残り3つの方法について考えてみましょう。

3、「楽しんで記憶する」と格段に効率が高まる

3番目は、「覚えるときにポジティブな感情を伴わせる」ということです。
このことは、頭に入れるとき、「へえ~、そうなんだ!(驚き)」、「面白いな(興味)」、「え、違うの!?(意外性)」といった感情を伴うと、覚えやすく思い出しやすいということです。
淡々と知識をなぞるのではなく、「知的発見を面白がる姿勢」や「知的好奇心」が記憶力に関して、とても重要になるということです。

例えば、「安山岩」ではどうでしょうか。これも名前の由来について、仮説を立てさせてみると、
「安全な噴火をする山なのかな」
「今は噴火しない安心していい山」
「簡単に手に入る値段の安い岩」など、考えを巡らせることでしょう。

そのあとで、アンデスの山でよく取れた岩石だから、昔の人が
「アンデスの山」=「安山」としたと伝えるのです。
もちろん生徒は、唖然とします。「そんなのダジャレじゃない」「やられた」などと。
このような、たわいのないことでも、意表を突いたことで笑いを誘い、それとともに記憶に残ります。(詳しくは「火成岩をどのように教えるか」参照)

また、新しい知識に関して、「これ、〇〇っぽいな」というイメージも持たせることも、いい方法だと思います。
肝心なことは、覚える対象に、「何らかのインパクト」をもたせることが重要なのです。その結果、感情や関連性が生まれ、記憶に残りやすくなります。つまり「感動が大きいほど脳に記憶は定着しやすい」ということです。

さらに、「学習内容の好き嫌いと内容の理解度は相関」しています。
ですから、「好き」もしくは「理解」のどちらかに、何らかのはたらきかけをすることが効果的なのです。

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理解度を上げるひとつには、「教科書は専門家の常識に基づいて書かれている」ことを意識することです。
たとえば一つの用語を説明するにあたり、本当はいろんな解説の方法があるのに、代表的なもののみを載せているということです。それで理解する生徒もいれば、そうでない生徒もいるのです。
ですから、先生が「言い換えた解説をする」ことは、理解者を広げたり、簡単にしたりするのに有効なのです。

4、知識を他の知識と組み合わせ、新たな創造へ

生徒が新たな知識を得たら、今まで持っている知識を選びだし、それを組み合わせます。そしてそこから、新たなことを生み出します。
つまり、生徒間のイノベーション(新たな価値の創造)です。このことに至るまでには、「論理立て」や、「判断」が伴うこととなります。
このことを促進するには「アウトプット」をすることが大切です。言い換えれば、「ラーニングピラミッド」の、底辺の活動を行うとことであると、考えてもいいでしょう。

このように、「覚える際に思考を伴わせ、思考に必要な記憶を選択し、組み合わせ、推理・推論、判断すると、前頭前野のネットワークが発達し、相乗的に思考力も高まる。」旨、吉田博士は述べています。

5、計算問題は典型問題を何度も繰り返し解く

理科の計算問題は、アンケートによると、一般的に「嫌い」、「苦手」と感じているようです。
この対策としては、実は「典型問題を何度も繰り返し解く」ことがコツとなります。

このことについて、吉田博士は次のように述べています。
「1桁の計算がパッとできるのは、脳内で自動化ができているから。」
「この自動化の仕組みを用い、基本的な解法パターンを用いる問題を繰り返し解き、多くのパターンを頭に覚え込ませよう。」
「自動化が進み、問題を見てパッと解法がすぐ思い浮かぶようになる。」

このような根拠に基づき、地味な指導法ではありますが、しっかり行っていくと、「嫌い」、「苦手」から確実に卒業できそうです。

以上5つのことについて、それぞれの方法について、別々に紹介してきましたが、単独で活用する場面より、複数の組み合わせで活用する場面の方が多いかと思います。
それはとても望ましいことで記憶がより強固になると思います。ぜひとも多数を組み合わせながら実行していきましょう。

参考文献
不可能を可能にする 最強の勉強法―究極の鉄則編 吉田 たかよし
不可能を可能にする最強の勉強法 吉田たかよし
《吉田たかよし先生が解説!》記憶と思考の脳科学的メカニズム (evidus.com)
記憶力をアップさせるスマホ勉強法 – 受験専門の心療内科・本郷赤門前クリニック(東京大学本郷キャンパス赤門正面) (akamon-clinic.com)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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