最近の植物図鑑の「科」の記述を見て、「おやっ」と思われた方はいませんか?
また、植物園の職員の話として「その花は何科ですか」と聞かれると、少しあわてるともいいます。
これらは植物の分類が、新しい手法による分類に変更されたことを受け、それに対応するためだそうです。
さて、このことについて、私たち学校現場では、どう対応したらよいのでしょうか。今回はこのあたりを考えてみたいと思います
1、新しい分類とは
新しい分類とは、「APG分類体系(Angiosperm Phylogeny Group=被子植物系統研究グループ)」といい、1998年に発表されました。その後さらに多くの植物を分析した結果、現在は2016年に発表された「APGⅣ」が最新版となっています。
では具体的に、何がどのように変わったのでしょうか。
身近な例をあげれば、赤や黄色に紅葉するカエデの仲間は、カエデ科ではなくムクロジ科となり、カエデ科はなくなりました。
スギはスギ科でしたが、スギ科がなくなり、ヒノキ科に入り、ユキノシタ科に入っていたアジサイは、アジサイ科として独立しました。
2、なぜ新しい分類になったのか
この新しい分類方法は、今まで行われてきた茎・葉や花などの形を比較して分類する方法に加え、DNAの遺伝情報をもとにした分子系統学の見解を合わせ考えた方法です。
今までは、系統が違う植物が、姿形が同じなので同じ仲間になっていたという課題があったようです。また、これまで目や科の特徴に重点をおいてまとめた図鑑が無かった理由の一つは、科や目の類縁関係がよくわからなかったためのようです。
陸上植物の系統関係は、この20年間の系統分類学の進歩で、ほぼ解明されたとのことです。遺伝子情報を用いた分子系統学的方法の確立と、形態や化学成分などの情報も総合して解析する分岐系統学的方法の確立によって、陸上植物の類縁関係の多くの部分が明らかになってきたのです。
そこで、これまで用いてきた全ての植物図鑑の目や科の分類は大きく変更され、新たに整理されることになったのです。
しかしこれに伴い、図鑑により科名が異なるなどの混在が生じています。ただし、今までの本や図鑑が役に立たなくなるのではありません。植物が変わるわけではないし、分布が変わるわけでもありませんので、科名や属名以外は問題ないと考えてよいとのことです。
でもひょっとすると、植物の名前などを調べながら、この方法変更に気づく生徒が出てくる可能性はあるといえるでしょう。
3、合弁花類と離弁花類
今まで、「被子植物を単子葉植物と双子葉植物」の二つに分けて、さらに、「双子葉植物を合弁花類と離弁花類」に分けていました。
しかし、この新しい分類によると、被子植物を「原始的な双子葉植物、単子葉植物、真正双子葉植物」の三つに分けることになったといいます。
また、「双子葉植物を、合弁花類と離弁花類に分けない」など、今までの分類表とはかなりの相違点があり、その点の注意が必要だといわれているそうです。
4、現在と今後の対応
この原稿を書いている2024年時点での中学校理科の教科書では、みなさんご存じの通り「合弁花類と離弁花類」「単子葉類と双子葉類」を扱っています。
ですので、結論的には、「私たちの中学校理科では、これらの変更への対応は、現在は基本的に必要ない」といえます。
ただし将来的には、上記の事情により、3で書いたように教科書の記載が変わっていく可能性はありえるともいえるでしょう。その辺のかじ取りは文部科学省が行いますので、そのタイミングで教え方が変えることになるかもしれませんね。
これもまた、科学技術の進化ととらえていくべきなのでしょうね。
参考文献
新しい植物分類 | 一般財団法人 公園財団 (midori-hanabunka.jp)
どっちが正解 第2章|オフィシャルブログ|東山動植物園 (city.nagoya.jp)
植物/被子植物の分類体系について – 広島大学デジタル博物館 (hiroshima-u.ac.jp)
陸上植物の進化-背景 (nibb.ac.jp)