授業設計と教材研究

大自然の中で得たものを授業に生かすには???2023.7

毎時の授業を設計することは、私たち教師の楽しみでもあり、忙しい中では苦労をともなうこともあるでしょう。
そこで、授業を構想するときの主な視点とともに、理科好きの生徒を育てるために、長期的な視点に立った野外での教材研究の例について、ご紹介したいと思います。

1、本時の授業を構想するときの視点とは

 本時の授業を構想するときには、あれこれと考えを巡らせますが、大切にしたい視点には、どんなものがあるでしょうか。
 主だったものを挙げてみると、おおよそこのようなことがあります。

  • 本時のねらいを設定する。
  • 活動を設定する。
  • 発問を設定する。
  • 支援を考える。
  • 評価を考える。
  • 板書を考える。
  • ICTを考える。
  • 日常生活との関連を考える。
  • 他教科・領域との関連を考える。

これらのことを考慮していくと、おおよそ授業設計としては、おおむね十分な状態になるかと思います。
このような教材研究は、なかなか忙しい中では大変でありますが、よい授業を行う上でできる限り大切にしたいものです。

また、教材研究は机上や理科室で行うものだけではなく、特に理科の場合は、日常生活や趣味、旅行、ドライブ、娯楽など、いたるところで偶然出会うものも多いといえます。なぜなら理科は自然を相手にしている教科だからです。
特に、ここに挙げた⑧と⑨はその傾向が強く、ある意味「人生における学びそのもの」ともいえるのが特徴です。
このようなことは、一夕一朝には収集できないので、本書では、各内容において役に立ちそうなものを、できる限り紹介するコンセプトをもって書いております。
みなさんにおいては、このことをベースにしてご自分の目や耳で聞いたことを、加えていって欲しいと願っております。

2、大自然の中で教材研究するときの視点とは

例えば、山岳地帯の国立公園にドライブに行ったとしましょう。
標高が上がるにつれ、広葉樹が針葉樹に変わっていくことを見ることができます。さらに上がれば、森林限界を超え、草原や岩稜となるでしょう。その間には、気温が低下し、涼しさが増していくことを感じますし、開封前のポテトチップの袋はパンパンに張ってきます。
晴れていれば、標高が上がるにつれ、紫外線の強さを感じたり、露点に達したところで、雲や霧の発生に遭遇したりします。

山に目を向ければ、成層火山やドーム状の火山もあります。また、浸食がすすんだ険しいしわのある山、浸食が進んでないしわの少ない山もあります。
温泉につかれば、酸性の湯では、指輪等の金属が腐食しないようはずしますし、味は酸味を感じることが多いですね。これをペットボトルに入れて持ち帰ると、BTB液等で色を確かめられるし、強酸性であれば、マグネシウムリボンを溶かす実験にも使えます。

硫黄泉につかれば、硫化水素臭を感じながら換気を心がけて楽しみ、一方アルカリ性の温泉につかれば、ヌルヌルする感を伴いながら、古い皮膚の角質が溶けて新しい角質が現れる、通称「美人の湯」を楽しめます。
足元の石を見れば、花崗岩などが無造作に転がっており、これを磨くと数万円する玄関の表札に変わったり、数百万円する墓石に変わったりすることを想像して楽しめます。その中で石英を見つければ、ガラスや半導体に加工されることを想起できます。

秋には、紅葉を見るクロロフィルが分解されて減り、赤色の色素であるアントシアニンが次々に合成されることを思い出し、モミジの見ごろを迎えた場所は、最低気温が4℃まで下がったことを想起せてくれます。
冬には、雪の結晶構造の美しさを見るとともに、冬の季節風がもたらす積雪が山陵の東西で全く違いことも体感できます。

このように、余暇の中にあっても、感じたり、考えたり、想起したり、写真を撮ったりすることができ、それが教材研究の一部になっていることに気づくでしょう。そして、このような体験について、長い教員人生の中で蓄積をし、授業の中の適切なタイミングで活用することが、日常生活に生かす理科の授業の実施なのです。

理科の教師とは、そういう夢のある職業であることを感じてもらいたいと思うとともに、そういう先生なら、きっと理科好きな生徒が育つものと思っています。

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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