ダイヤモンド半導体の可能性とは

究極の半導体材料の実力とは???
2024.3

 

ダイヤモンドを使った半導体パワー回路の開発に、佐賀大学の嘉数(かすう)誠教授(半導体工学)のグループが、世界で初めて成功しました。これまで難しいとされてきた高速スイッチングや長時間の動作が可能で、パワー回路で実用化できれば、次世代通信規格「6G」や量子コンピューターなど最新技術への応用も期待できます。
そこで、このダイヤモンド半導体の現状について、簡単な範囲で見ていきましょう。

1、ダイヤモンド半導体の可能性とは「ダイヤモンド半導体」とは

ダイヤモンド半導体とは、合成ダイヤモンドを用いて作られる半導体のことです。現在、パワー半導体で主流の素材であるシリコン(Si)と比較しても、高温下・高電圧下でも稼働ができる特徴があります。
昨今の電子機器の小型化・高性能化に伴い、パワー半導体の効率化や小型化が求められていますが、現在主流のシリコン製のパワー半導体だと、大幅な性能改善は難しいとされています。
そこで、シリコンに変わり、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)が開発され、性能と電力効率が桁違いに向上しましたが、ダイヤモンドは、これらを超える省エネ性や耐久性をもっています。このため「究極の半導体材料」とも称されています。

2、脱炭素社会の実現に向けて

例えば、太陽光発電の送電を考えてみましょう。送電にも半導体が使われていて、その際、熱になって損失するエネルギーロスの問題があります。しかし、ダイヤモンド半導体を用いれば、直流を交流に効率的に変換できるため、消費電力を大きく削減できます。
またダイヤモンド半導体は、高温、高耐圧、高周波で動作できるという特徴があるので、EVなどの高電圧を使う車両に用い、脱炭素社会の実現に大きく貢献できるといわれています。
さらに、演算速度が格段に速くなる量子コンピューターですが、その一部にダイヤモンド半導体を使う研究も進んでいます。これが実現すれば、演算速度があがるだけでなく、多くの情報を直径5センチの基板に、全部記憶させることができます。
このように、ダイヤモンド半導体が実用化できれば、量子コンピュータ、電気自動車など、さまざまな分野で普及することは間違いないといわれています。

3、厳しい環境でも使用可能

極めて放射線量が高い場所では、シリコン半導体では、放射線がシリコンの原子にあたると、原子を元の位置からはじき出すなどして、損傷を与えてしまいます。
一方、ダイヤモンドの場合、炭素が強く結合しているため、放射線があたっても損傷が起きにくいのです。
またダイヤモンド半導体は、シリコン、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)と比べ、耐圧や熱伝導性などの点で大きく優れています。
このためダイヤモンド半導体は、高温環境下や放射線量の多い場所でも作動します。このような特徴から、原発の廃炉作業での活用も考えられています。
このような特徴により、他でも、過酷な環境である宇宙分野放射線を使う医療機器での応用に期待が集まっているのです。

4、課題の克服

ダイヤモンド半導体は、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)などの素材より優れているものの、実用に至るまでにはさまざまな課題があります。
まず、ダイヤモンドは非常に硬い材料です。このため、精密な研磨や加工は極めて難しくなります。
しかし、ダイヤモンドは究極の素材としてものすごいポテンシャルがあります。このため、ダイヤモンドにしかできない領域を目指し、実用化に向けて開発が進んでおり、早ければ2025年にダイヤモンドのパワー素子製品の実用化が目指されています。
世界でダイヤモンド半導体の実用化に向けた研究が始まって30年あまり。さまざまな研究者が壁を一つ一つ突破していくことで急速に進歩を遂げているいま、ダイヤモンド半導体が私たち人類の進歩に貢献する日もそう遠くないかもしれません。

参考文献 
究極のパワー半導体「ダイヤモンド半導体」|実用化への道筋と課題について | ストックマーク株式会社 (stockmark.co.jp)
次世代パワー半導体である、「ダイヤモンド半導体」が実現する未来とは[2050年カーボンニュートラルに向けた技術開発の最先端を知る] – fabcross for エンジニア
ダイヤモンド半導体の実用化にめど、25年に製品が登場か | 日経クロステック(xTECH) (nikkei.com)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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