火山岩と深成岩の違いをどう教えるか

斑状組織の名前の由来とは??・・・斑晶はなぜできるの???2023.2

火山岩と深成岩の違いを教えるときに、斑晶や石基、各組織や生成する場所の違いなどを扱いますね。
生徒にとってこれらの用語は、あまり聞きなれないものですので、難しい印象を与えがちです。できれば、わかりやすく、簡単に説明をするとともに、ストーリー性を持たせ、長期記憶に残りやすい教え方をしていきたいものです。
では、このことを意識しながら、それぞれの知識を深堀し、一つずつ具体的に考えてみましょう。

1、斑状組織

」は、訓読みでは「まだら」と読みます。
「まだら」とは、違った色が所々にまじっていたり、色に濃淡があったりすることです。生徒にとって、身近な「まだら模様」の例としては、次のようなものがあります。
ホルスタイン」・・いわずと知れた乳牛の模様
ヒョウ柄」・・「ピコ太郎」「ペンパイナッポーアッポーペン」(PPAP)の衣装
黒と白のまだらな模様の「

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「斑晶」は、石基中に散在する比較的大きな結晶で、普通は肉眼で認められる程度のものをさします。
また、肉眼で識別できるものを「巨斑晶」、顕微鏡を用いないと識別できない小さなものを「微斑晶」と区別することもあります。このときの基準は、鉱物粒の直径が0.5ミリメートル以下であれば「微斑晶」と分類されます。

「斑晶」は、地下のマグマだまりや上昇するマグマが、徐々に冷却してゆく過程で、結晶となって固まることできます。これは鉱物によって、冷えて結晶となる温度に違いがあることなどに起因しているようです。

「石基」とは、肉眼では識別できないほど小さな結晶の集まりや、ガラスからできていて、マグマが地表に噴出したとき急に冷やされて固まった部分です。
いいかえれば、「石基」はガラスと微細な鉱物粒子がまざった緻密な部分であるので、上薬のかかっていない陶器や磁器と同じような質のもののようです。

2、等粒状組織

「等粒状組織」とは、結晶がほぼ同じくらいの大きさの粒でできているものです。
もう少し詳しく説明すると、岩石を構成する鉱物の粒が、平均して1mmより大きく、同じくらいの大きさで、ぎっしりと集合している組織です。
なぜこのようになるかというと、ゆっくり冷えたので鉱物の結晶は大きく成長できるとともに、成長する結晶どうしがぶつかり合って、同じ大きさの粒になりやすくなるからです。

3、火山岩と深成岩のできる場所

火成岩、火山岩の名前と区別について、はじめて聞いたとき違和感を感じた方も、少なからずいたのでないではしょうか。
このことを少し解説すると、火山由来のものはすべて火山岩で、定義が逆ではないかという発想から起きることです。

調べても残念ながら火成岩と火山岩の名前の由来は、確かなことは確認できませんでしたが、例えば下図のようなもの用いると説明がしやすいのでお勧めです。
地表に出ている火山を構成する部分が「火山岩」、地表から距離があるのが、「深成岩」となります。これなら、違和感はかなり薄れそうです。
ちなみに、おダイヤ様は深成岩の下部でできるそうです。

図引用 http://www2.city.kurashiki.okayama.jp/musnat/geology/rock/igneousrock/igneousrock1.html

4、結晶のでき方の例示

等粒状組織や斑晶組織の結晶の模擬実験として紹介されるのが、ミョウバン水溶液などからの再結晶の例です。
説明としては、とてもよい方法かと思いますが、ちょっとした課題もあります。
火成岩の場合は、水溶液中からの再結晶でなく、液体から個体になる際の結晶であることです。
ですから、できるなら状態変化の過程において生成する結晶を、例示に使いたいところです。
この条件を満たすものとして、結晶が大きく成長するものに「」があります。ただし、身近であっても例としては専門的過ぎると思います。

」ではどうでしょうか。家庭の冷凍室でつくる氷は、急に冷やすことになりますので、水に溶けている気体が閉じこめられて白っぽい氷となります。
市販されている天然氷や単結晶氷は、透明になるようゆっくり冷やされるため、気体は外に排出され、大きな結晶といえるでしょう。
しかし、これも例としては専門的すぎるようで、この辺りは悩ましい課題のようです。

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このようなことを考慮して、火山岩の結晶のでき方をやさしく説明するとすれば、「鉱物の結晶が大きくなる前に、マグマが冷たい地上に放り出された。これは、いわば「冷凍庫の氷のように、急にこちーんと凍ってしまったもののようなものだ」と説明するあたりが、現時点ではいいのかなと思っています。

参考文献
斑晶(はんしょう)とは? 意味や使い方 – コトバンク (kotobank.jp)
NHK高校講座 | 地学基礎 | 第26回 第3編 私たちの大地 火山活動の多様性
火山岩と深成岩 (h-hagiya.com)
雪氷工学研究室 | 放射製氷の理論と応用 (nagaokaut.ac.jp)
単結晶氷とは?単結晶氷を製造しているのはサカタ製作所 (sakata-s.co.jp)
かき氷の多様性を生むのは氷の結晶構造と切削技術|株式会社ぐるなびのプレスリリース (prtimes.jp)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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