知識を容易に定着させるには・・パート1

知識を定着しやすくする脳科学を利用した究極のテクニックとは???(前半)2023.2

知識を容易に定着させる授業とは、どんな授業なのでしょうか。
知識を定着させることは、脳に情報をしっかりと書き込むという、脳内作業そのものです。
ですから、人の脳のメカニズムに沿った、合理的な方法でなければ、大きな成果は期待できません。
そこで、医学や脳科学を利用した5つの方法について、考えてみたいと思います。今回は、その前半です。

1、   覚えるときに思考を伴うようにする

1番目は、「覚えるときに、思考を伴わせる」ということです。
実は、脳内で「思考しながら」整理した情報は「長期記憶」になりやすく、想起もしやすいのです。
例えば、「疑問を持たせ、仮説を立てさせてから学習する」ことが、これにあたります。

この具体例として、火成岩の6種類の名前を教え、覚えさせる学習で考えてみましょう。
もし、それぞれの岩石の特徴を教えたのち、名前を丸暗記してくださいと言ったらどうでしょうか。かなり無味乾燥な作業となり、仕方なくという意識のもと、あまり好評ではないでしょうね。

そこでです。「玄武岩は、なぜそういう名前がついたのか、仮説を立ててごらん」と言ったら生徒は、どんな答えを返すでしょうか。
「中国の四神?」、「中国から伝わった霊獣?」、「ヘビやカメに似ている?」など、ゲームで覚えた知識が、誰かから出てくるかもしれません。

さて、それが終わったら、名前の由来を次のようにあかします。
「玄武洞の岩の模様が亀やヘビに似ており、中国の想像上の玄武という動物を思い出した。」と教えます。
(詳しくは「火成岩をどのように教えるか」参照)

このようにしたら、覚えたり、思い出したりするのは、かなり容易になるでしょう。なぜなら気持ちが動き、授業中のエピソードから連想できるからです。
実は、記憶するには、疑問に感じた項目を徹底的に掘り下げてみることが、有効な方法なのです。特に無味乾燥なものほど効果的で、その内容に親しみが増すかと思います。

この方法について、医学博士である吉田たかよし先生は、このように説明しています。
「疑問を持たせ、仮説を立てさせると、脳内では『アハ体験』が生じます。」
「アハ体験」とは、簡単に言えば「わかったぞ」という体験です。
このように、納得したときに、脳の中で激しい電気が駆け巡ることです。その瞬間の思考力が一気に高まるので、頭がよくなる旨の説明をしています。
そして、「アハ体験を伴った記憶は、生涯忘れることはない!」とも述べています。

この「アハ体験」の解説ついては、脳科学者の茂木健一郎氏が、のように述べています。皆さんも、これを読む前に仮説を立て、読んでみてはいかがでしょう。(平易な文で、3分ほどで読めます。) http://msc.sony.jp/ahap/aboutahataiken/

さらに吉田博士は、
「脳科学では、記憶力と思考力とは表裏一体」
「記憶がなければ思考できないし、思考を伴わない記憶は、脳に定着せず忘れがち」
と、まとめています。
これらのことは、授業に応用できる場面が、たくさんありそうですね。

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2、既存の知識と関連づけて、記憶をネットワーク化する

2番目は、新しい知識を扱う際に、「既知のことに関連づけて、頭の中を整理させる」ということです。
これは、「他の知識と関連づけると、覚えやすく、思い出しやすくなる」ということを意味しています。

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知識の丸暗記は、たとえ記憶できたとしても、使えない知識になってしまいます。理解しながら覚えることが、記憶することの決め手なのです。
したがって、私たちは、理解を十分にさせ、関連する事項を紹介して、それをストリー化するなど、できるだけ関連付けを助ける意識が、カギとなります。
これは新しい概念について、因果関係や対立関係、イメージ、意外なエピソードなどとセットで覚えることがあてはまります。

例えば、「花こう岩」は、地中深くのマグマが冷えて、鉱物の結晶がそろった等粒状組織になっています。そのため見た目がきれいなので、研磨して家の「表札」や「墓石」、ホテルの「ロビーの床材」など高級素材として使われています。
(詳しくは、「火成岩をどのように教えるか」参照)

また用語の語源を、推理したり調べたりしてみるとよいと思います。
例えば、「流紋岩」は、「流れるような縞紋様」があることに由来しています。
時間がなければ、調べさせなくとも、一言添えるだけでも、かなり違うと思います。
このようにすると、他の知識(記憶)とつながりやすくなり、記憶に残りやすくなるのです。

ここまで、5つのうち、2つについて解説してきました。続きの3つについては、パート2を参照してください。

参考文献
不可能を可能にする 最強の勉強法―究極の鉄則編 吉田 たかよし
不可能を可能にする最強の勉強法 吉田たかよし
《吉田たかよし先生が解説!》記憶と思考の脳科学的メカニズム (evidus.com)
記憶力をアップさせるスマホ勉強法 – 受験専門の心療内科・本郷赤門前クリニック(東京大学本郷キャンパス赤門正面) (akamon-clinic.com)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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