生態系の保全

生態系の危機の現状は???2023.7

 生態系の保全では、食物連鎖や生態系のピラミッドのなど概念を理解させていますが、ともすると具体的な危機への踏み込みがやや薄くなって、意欲や態度が十分育たないケースもあるようです。
では、教える側である私たち教師は、現在の状況をどの程度理解しておけば、よい指導につなげることができるのでしょうか。
これについて、一端を紹介してみたいと思います。

1、海洋資源では

私たち人間にとって、海や海洋生物は重要な資源となっていることは言うまでもありません。にもかかわらず、世界では海洋資源の約30%が乱獲されているとされ、絶滅危惧種等に指定されている生物もいます。
さらに二酸化炭素を原因とした海洋の酸化や、流出させている海洋ごみが年間約800万トンもあり、海洋汚染や生態系を破壊している現状があります。
また、農業及び工業排水、未処理の下水や油、栄養塩類、堆積物の問題も改善していきたい問題の一つです。
加えて、海水温上昇は、海流の変化だけでなく、水中に溶ける酸素の量が減少するために、海洋の酸素欠乏も引き起こします。
このようなことは、海洋生物の多様性を失うことであり、このまま続けば、持続的に海洋資源を得ることができない状態になってしまいます。
これらを防ぐため、海洋、そして沿岸の生態系が持続的に生き続けられる取り組みがあります。その一つに、青いラベルにMSC(海洋管理協議会)認証と書かれた「海のエコラベル」が貼られた水産物が売られています。
これらは海洋の自然環境及び水産資源の保全のもと取られた水産物であることを示すマークです。水産物を購入する際は、この海のエコラベルが貼られたものを積極的に購入していくことも、私たちにできる海洋保全活動の一つと言えます。

2、陸上資源では

陸上でも密猟・乱獲、外来種の侵入、森林伐採、地球温暖化(気候変動)などがあり、同様に絶滅危惧種が増え続け、いまやトナカイやキリンまでもが姿を消そうとしています
具体的に述べれば、多様な生物の住みかとなっている森林は、全世界で毎年1,300万ヘクタールほど失われており、これは、なんと東京都の面積約60個分にあたります。
動物が絶滅の危機については、推測されるだけでも、鳥類の14%、ほ乳類の25%、両生類の41%において絶滅の危機にあるといわれています。これには、土壌の砂漠化も拍車をかけているようです。
このようなことに歯止めをかけるべく、日本でも生物を保護し、野生に帰す活動が行われていますが、動植物の絶滅を止めるまでには至らないものもあり、さらなる保護・保全活動が期待されています。
世界に目を向けると、国連開発計画が主体となり、地球に優しい生産形態を目指す「グリーン・コモディティ・プログラム」が実施されています。このプログラムでは、現地政府機関の人材育成、農家組織の強化と、生態系、生物多様性保護を目指した農法への転換、その必要資金のための小額の融資の提供などが行われています。

また、陸の豊かさを守るために、すでに様々な条約や法律も制定されています。その代表的な条約がワシントン条約とラムサール条約です。
ワシントン条約は、密漁・違法取引を取り締まることを目的とした条約です。
一方、ラムサール条約は、湿地に関する条約ですが、水鳥保護のほか、防災や水資源の確保という視点を加え、集水域という広域の流域環境保全を進めることを目的とした条約です。
このような、森林伐採や乱獲や外来種の定着など、陸の豊かさを失う背景には、先進国による需要があり、われわれの生活を維持しようとする裏側で、知らぬ間に生態系を崩壊させて可能性があります。
快適な生活を求めすぎて、知らぬ間に、このようなことに加担していたなどいったことのないよう、理解を深めさせていくことも大切になっています。

ここまで述べてきたように、人間活動が生物環境に与える影響は無視できないほど大きく、世界では、生物の絶滅する速度が1,000倍になったとも言われています。
自然が破壊されれば、水や食料もなくなり、私たち人間も生きていけなくなります。つまりこのことは、自分の首を自分で絞めることに他ならないのです。
何としてもこれを止めるために、ここまで述べたことを取捨選択し、必要な情報に触れながら、しっかりと理解させ、自然を守る意欲と態度を育てておきたいものです。

参考文献 
海洋生物の多様性を守るために日本が行っている取り組みは?│gooddoマガジン|寄付・社会課題・SDGsに特化した情報メディア
SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」で解決するべき問題と現状とは (gooddo.jp)
絶滅危惧種の現状と保護・保全活動 SDGs~目標15.陸の豊かさも守ろう~|アピステコラム|冷却・防塵・放熱など熱対策ならアピステ (apiste.co.jp)
SDGs|目標15 陸の豊かさを守ろう|年間4万種もの生物が絶滅 (sdgs-support.or.jp)
SDGsの目標15「陸の豊かさも守ろう」で解決するべき問題と現状とは (gooddo.jp)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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