海陸風と季節風

季節風の発生メカニズムとは???
2024.2

 

海陸風と季節風は時間軸などの違いなどはあるものの、共通することも多いのが特徴です。そこで海陸風と季節風の発生メカニズムについて整理してみましょう。
また季節風を生む原因には、この発生メカニズムとともに、季節の特徴的な高気圧も強く影響しています。そこで、太平洋高気圧やシベリア高気圧との発生の原点を理解するとともに、これらと季節風との関係も整理してみましょう。

1、海陸風

海風は、日本では強くても毎秒数mで、普通は毎秒3~4m程度のことが多いようです。また、夏の小笠原高気圧に覆われるときや、春・秋、移動性高気圧に覆われるときに発達します。
海風は、日中、内陸の地表面の温度が大きくなるために発生します。内陸部には上昇気流ができて、その後、海の方に向きを変えます。これを上空の反対海風と呼ばれています。その後海上では下降気流となり、下層の海風につながります。気象学ではこれを海風循環と呼んでいます。
別の言い方をすれば、このような循環系をもっているのが海陸風です。そして典型的な循環系の限界は、海岸から30-40km位のようです。

2、海陸風と季節風

海陸風と同じようなことが、季節の変化に伴って、より大きなスケールで起きています。
大陸と海洋を比べると、夏は大陸の方が海洋よりも暖まりやすいので暑くなり、冬は海洋が冷えにくいので大陸よりも暖かくなります。ですから、夏は海洋から大陸に向かって風が吹き、冬は逆に大陸から海洋に向かって風が吹くことになります。
これを日本にあてはめると、夏は南よりの蒸し暑い風、冬は北西の冷たい風が吹くことになります。
このようにして、季節によって決まった向きに吹く風が季節風です。ただし日本の夏の季節風は比較的弱いので、日本では季節風といえば冬の北西の風をイメージする方が多いと思います。

3、太平洋高気圧の原点

もう一つ、夏の季節風が日本に吹く理由に、太平洋高気圧の発達があります。
太平洋高気圧の原点は、熱帯域西部(フィリピン付近)の大気対流です。フィリピン付近では、海面水温や気温が高く、海面からの蒸発も盛んなため、高温の空気が上昇します。そしてその空気は、北上して中緯度地域で下降します。すると、その場所は周囲と比べて高気圧となります。これが、太平洋高気圧となるのです。
夏になると気温がさらに上がって上昇する空気がさらに多くなり、結果として太平洋高気圧の勢力が大きくなるため、日本付近まで張り出してきます。

これと同様なことは、実は、太平洋の熱帯の広い範囲で起きています。この赤道付近の積乱雲が発達している地域を「熱帯収束帯」と言います。この赤道付近で上昇した空気は、緯度30度付近で下降気流になり、この地域を「亜熱帯高圧帯」といいます。
この亜熱帯高圧帯の中で、夏頃日本を覆ってしまう高気圧が「太平洋高気圧」であるとも言えます。ですから、「太平洋高気圧」はまたの名を「北太平洋高気圧」といい、ハワイや北米西海岸までつながっていることが多いのです。

4、シベリア高気圧の原点と吹き出し

太平洋高気圧の原点と同様に、「シベリア高気圧の原点」も考えてみましょう。
シベリア高気圧はシベリア付近にできる背の低い寒冷高気圧で、冬場の放射冷却によってできた冷たい空気が、地表付近にたまることによってできています。冷たい空気は重いため、上から下に押さえつける力が大きく、気圧が高くなるわけです。
さらに、北半球の冬は、陸上が冷えて海上の方が温度が高く、夜に海陸風が起きるときと同じような状態となり、シベリアから海に向かって空気が流れ出そうとします。
ところが南には標高が高いチベット高原や、8,000m級のヒマラヤがあるため、シベリアで作られた冷たく重い空気はここで遮られ、向きを変えて日本に流れ込んできます。このため、日本の冬は格別の寒さとなり、日本海側では大雪となりやすく、太平洋側では風が強く乾燥した晴天をもたらします。しかも、シベリア高気圧の動きは遅いので、このような冬型の天気は何日も続きやすいとのことです。

参考文献 
海陸風と季節風 (s-yamaga.jp)
海風 – 風を歩く | バイオウェザーサービス (bioweather.net)
ebayama.jp/merumaga/20140601.html
太平洋高気圧と小笠原気団の違いを解説します | 気象予報士のぶやんの学習帳 (yutakani-nikki.com)
シベリア高気圧の中心が1084hPaに 記録的な値、寒気の蓄積を示す – ウェザーニュース (weathernews.jp)
シベリア高気圧 – お天気豆知識 | バイオウェザーサービス (bioweather.net)

投稿者: KANTAN理科

感嘆!理科と申します。 元公立学校教員です。 理科、環境教育、防災教育に関心があります。   先生方はとかく忙しいので、本サイトを読むことで、少しでも教材研究やきょいく技術の習得をスピーディーに行ってもらいたいと考えています。 特に若い先生方のお役に立ちたいと思っています。

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